ヤンマーニ男というのがいるらしい。

 http://d.hatena.ne.jp/kanose/20051026/yanmani

 まずは上のエントリからたどってフラッシュを見て頂きたいのだが(音が出るので注意)、ヤンマーニ男というのがいるらしい。

2ちゃんねるのアニメ板の『MADLAX』スレが発祥。会社のカラオケで、誰も知らないだろうと思って、『MADLAX』の挿入歌を歌ったところ、実は一般人だと思っていた先輩女性社員がそれに反応して、彼女も『MADLAX』好きであることが判明する。その後紆余曲折を経て、結婚し、子供ができるまで至る。

 というのがおおまかなストーリーであるが、この話には重要なポイントがある。「一般人だと思っていた女の子が実はオタク」だったということだ。上記の試食会のエントリからも分かるが、オタクは恥ずかしいことなのである。少なくとも、「君、法学部?」、「君、テニスサークル?」等という質問とは違って、わざわざ、手招きされ、耳元で小声で訊かれるくらいには恥ずかしいことなのである。男の子にとってもそうであるのに、況や女の子においてをや、である。つまり、一見、普通の人っぽい女の子の前で彼女の琴線を刺激するアニソンやら何やらを歌えば、二人はアニメという共通の話題を持つことが出来ると同時に、恋愛を燃えさせる燃料として名高い、世間からの障害、即ち「オタクに対する偏見」というをも受けることになる。
 つまりは着火と同時に、ガソリンを注ぎ込むようなもので、これはもう行き着くところまで行かない方が嘘、というものである。

 しかも、この手法は同時に優れたスクリーニング効果を持っている。即ち、歌うアニソンの選択によって引き寄せられるオタクの種類、より具体的に言えば女の子の趣味とある程度の性格を限定することが出来るのだ。もちろん、例外はあるだろうが、しかし、いくらかの指標にはなるだろう。犬夜叉のテーマソングではどんな女の子でも引っかかりうるからスクリーニング効果は期待できないが、デカレンジャーのエンディングに反応してくれる子がいたら、ほぼ間違いなくその子は特撮好きといえるだろうから、この場合はスクリーニング効果があることになる。ようは「深い」歌を歌えばいいのだ。

 さて、ここまで来れば試してみたくなるのが人情。私もヤンマーニを引っさげて歌いに行こうかと思ったけれど、僕はMADLAXを一度も見たことがないのでパス。「帰ったらパスタにしよう」とか言われても反応できません。どうせ歌うなら素敵なリアクションをしてくれる歌がいい。ヤンマーニだとポーズだけだが、他の歌ならプラスαが期待できるかもしれない。例えば、そう、ネコミミモードなんかどうだろう。
 ネコミミモードは「ネコミミモード♪」という言葉の合間合間に「お兄様」「私の僕♪」といった言葉が入る、ハイレベルな電波ソングだ。これに反応できる女の子は相当電波な子に限られるだろうから、スクリーニング効果はばっちりだ。しかも、歌の最後は「キス、したくなっちゃった……」だ。これは、もうキスするしかない。
「おにいさま」
「……セツ子」
「おにいさまは私の僕なのです」
「あぁ、そうさセツ子。僕は君の……そして愛の僕になってしまったんだ」
(二人、しばし見つめ合う)
「キス……したくなってしまいました」
「セツ子……」
「おにいさま……」

 ……この路線はパイオニアがいらっしゃるみたいだから避けることにしよう。そもそも、こんな歌を歌って誰も反応しなかったらオタク発覚→村八分といった例のパターンを踏襲するだけで、何も得るものがない。ハイリスクすぎるのだ。
 他には『あずまんが大王』なんかも考えてみた。『空耳ケーキ』なんかは「ちょっとイロモノ」ぐらいで済む歌だし、あのアニメを好むようなのんびりとした女の子ならそう悪い子はいないだろう。が、しかし、この歌にも問題があることが発覚した。去年、確か先輩達が歌っていたのだ。それも、全員が全員男の先輩達が、である。女の子が反応するなら良い。しかし、万一にも男の子が反応して「君には空耳? 『好きだよ、好きだよ』の声♪」とかなってしまったらこれは悲劇である。もう、泣くしかない。よって、これも却下。
 ここで僕は原点に返った。何を歌うかではない。僕は何が好きなのか、から考えるのだ。山倉克也は鍵っ子なのだ。なれば、鍵ソングを歌わずしてどうする。鍵ソング中、もっとも破壊力が高いのは『青空』か『小さなてのひら』。しかし、後者はこの場面で歌うにはあまりに手順前後が過ぎる。となると、消去法で『青空』しかない。
 『青空』はあのとき、あのシーンで流れる曲。まさに最適ではないか。この場合はゴールでなくスタートだというのが難点と言えば難点だが、しかし、そんなのは些末な問題。鍵っ子ならばパブロフの犬的に号泣してるから、そんなことは気にしないだろう。さぁ、歌わんかな、我が魂を『青空』に乗せて……って、カラオケにないのか、『青空』は……orz
 『鳥の詩』は歌えないしなぁ。『Farewell Song』は歌えるけれど、出逢いから『さよならの歌』ってのもねぇ。うーむ、まだまだ考える必要があるようです。

 結局、ヤンマーニを聞き過ぎた結果、中毒になってしまい、思わず中古CDを注文してしまった私は負け組ですか。でも、カレリン、歌上手いんだもん。つーか、こんなに上手いんなら(『雲の向こう〜』の)エンディング、沢渡サユリで歌えばよかったのに。ちょっと聞きたかった気も。