パンピーが来る!

 ことの始まりは月曜日の夜に来た1通のメールだった。送り主は同じサークルの同回の女の子で、学祭の試食会をしたいのだけど、他の下宿組はどこも都合が悪いから部屋を貸してくれないかとのこと。しかし、僕の部屋もそう広い方ではないし、キッチンの設備はアレだしで、あまり試食会に向いているとも思えなかったので、丁重にお断り申し上げようかと思ったのだけど、調理器具も持ってくるし、部屋が汚くても構わないと懇願されるので、人数がそれほど多くないこと*1を確認して、騒がないことだけをお願いしてOKをだす。と、同時に部屋を掃除することにする。本の類が積み上げてあるのを除けばそれほど汚い状態ではなかったのだけど、何しろほらエロゲのパッケージとか*2がそこらにおいてあるんで、見られたら、ちと拙いことになる。
 来るメンバーについては聞いていなかったが、食品係が来るとのことである意味力仕事とも言える物品係と比較すると女の子が多いだろう。中には僕にほのかな憧れを抱く後輩の女の子がいるかもしれない*3。そんな子が、ヤバげなパッケージやら、ヤバいことそのままのパッケージ裏なんかを見たらどうなるだろう。
「こんなのじゃなくて、私を見てください」
「不潔です」
「えっちなことはいけないと思います」
 などなどの罵詈雑言の嵐を受け、私は「文芸部エロゲ分会」として独立という名の村八分にあってしまう。それは寂しすぎる。

 と、言うわけで色々隠す。KanonのドラマCDの泣き顔のあゆだとか、『アルルゥとあそぼ』についてきた恥ずかしくてとても飾れないまじアンのカレンダーだとか、表紙を見られたら一発アウトの『CLANNAD』のビジュアルブックだとかを隠す隠す隠す。後は、机の上、ビニールの下に挟み込まれたLeafやらKeyやらからの暑中見舞いも隠す。1巻からきっちり揃ったネギまスクランもしまい込み、こうしてどこからどう見てもパンピー(一般市民)の部屋にしか見えないように仕立て上げることに成功したのである。
 さて、大学で待ち合わせて部屋に向かう。男女比は男が僕と某Mくん2人で、女の子は3人。あと一人は途中で合流するとのこと。食材を買って帰る途中、僕は万全を期してMくんにお願いをしておく。彼は私がオタであることを知っているのだ。
(山)「一応は隠したけれど、何かヤバげなものがあった場合はスルーするか、何かで隠してくれると助かる」
(M)「分かった」
 熱い男の友情である。さて、部屋に到着すると当たり前のように物色される私の部屋。意外と片づいていることに驚いているのか、特にツッコミは入らない……はずだったのだが、ぬいぐるみの類を見つかり、ファンシー好きの烙印を押される。
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 調理を開始した頃に、入る一本の電話。物品担当の人から連絡があって、こちらに来るとのこと。せいぜい1人か2人だと思っていたらば3人も来たぜよ。話が違うじゃねぇか、とつっここもうかと思ったけれどやめておく。もしかしたら、この後、僕に憧れる後輩さんが来るかもだしね(来ません)。
さて、問題は物品係の一人Hくん。彼は早速、僕の本棚から何やら本を取り出して読み始めている……って、『魔法遣いに大切なこと』!? しまった、本棚を片付けてない! ガンスリとかエア・カノ・クラのアンソロとかあるぞ。いや、それよりももっと恐ろしいものがっ!
 慌てて目をやるとそこには周囲の注目を集めながら月姫読本を読みふけるHくんの姿が……orz。よりにもよってそれを見ますか、みんなの前で読みますか。呆然とする僕に気づかず「こんなの読むんだねぇ」とか言いながら、なおも読み続けようとするHくんを慌ててMくんが止める。後ろで見てたIくんも慌てて「格ゲーのアレでしょ、確か」とフォロー。メルブラがアーケード版になってて良かったなぁ、と少し安心。とりあえず、危機は乗り切った……はず。いや、ガンスリ読んでる女の子がいたけどさ。
 その後、無事に調理を終え、試食をする。何故か、お酒が入って騒いでる輩がいたような気もするけど、あえて気にしないことにする。片づけを終えて帰る間際、さっきガンスリを呼んでいた女の子が手招きしている。何だろうと近づくと耳を貸せと。言われるとおりにすると
「山倉くんって、オタク?」

 うるせぇ、とっとと帰れ

 いや、口には出さなかったけどさ。とりあえず、次は本棚にも気を遣うべし、というのが反省点ですね。って、次はないか……ないよね? ないと良いなぁ。

*1:僕を含めて6人

*2:はるのあしおと』は良いとしても『MIND REAPER』や『MOON』は拙すぎる

*3:全員の顔やら何やら把握するほど部会に参加しないので、いる可能性は否定できない。いや、可能性はね