米澤穂信 『ボトルネック』

ボトルネック

ボトルネック

あらすじ

 恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。(アマゾンの書籍紹介より)

感想

 何というか、かなり重い作品だった。物語の流れ自体は中盤で読めていたのだが、それから先の真綿で首を絞められるような展開はまさに息が詰まるようで、胸が苦しくなるような感覚を覚える。そんな物語の中、「姉」であるところのサキの明るさ、聡明さが唯一の救いとも言えるものだったが、物語の後半ではその輝きさえもより闇を深くする作用をもたらしてしまう。中盤、主人公が「ボトルネック」という言葉の解説を読みながら呟いた一言が終盤重いものとなってのしかかってくる。
 一口に青春といっても色々なものがある。小説で書かれるのは爽やかだったり、切なかったりするが、ただ痛々しいだけの青春もある。昨今の自殺の流行を見れば、それが必ずしも物語の中だけではないことが分かろうというものである。クライマックス、主人公は大きな岐路に経たされる。進むべきか戻るべきか、そんな中彼に送られてくる一通のメッセージ。あぁ、青春とはかくも痛々しい。


 このようにとにかく痛々しい作品です。こう書くと誤解を与えそうだけど、主人公の造形などからはイムさんの作品を思い起こしたりもしました。決して明るい作品ではありませんし、読んでいて楽しいかと言われたら微妙です。胸に刺さったとげがどんどん大きくなっていくような、そんな作品です。それでも、駄作ではないし、むしろとても良くできた作品だとも思います。もっと暗くなって良いところをサキのキャラクターが支えているし*1、その辺りのバランスの取り方も上手いと思う。
 ただ、万人に勧められるとは思わないので、読む人は覚悟を決めてというか心して読むようにされるのが良いかと思います

*1:しかし、米澤さんは「お姉ちゃん」大好きだよなぁ。よく描けているし