東野圭吾 『ある閉ざされた雪の山荘で』

 

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)

ある閉ざされた雪の山荘で (講談社文庫)


 ある山荘に集められた七人の役者達。四日間の舞台稽古が行われるはずだったが肝心の脚本家は来ず、代わりに届いた手紙には、この山荘を「吹雪で下界と遮断されたもの」と考え、その後の四日間を過ごせという指示が書かれたいた。拍子抜けしながらも、その指示に従う役者達。だが、次の日、一人の女優が姿を消し、山荘の一室には彼女の殺害状況について記された詳細な「設定」が残されていた。
 芝居のように思われていた事件は、しかし、被害者が増えるにつれ現実味を増していく。果たして、事件は芝居か、それとも現実なのか。


 まず、こういわなくてはならない。これは面白い。そして、その面白さを説明しようとするとどうしてもネタバレしそうになってしまう。ということで、これは是非、読んで欲しい、としか言いようがない(爆)。多彩な作風を持つ東野圭吾が読者をだまそうと、その事のみに全力をかけた作品ではないか、と、そんな気がするので、出来れば事前にいろいろな情報を入れないまま読んだ方が良いかもしれない。と、いうことで読むように(笑)


 個人的に印象に残っているのは、ミステリのルール(ノックスの十戒)について登場人物が述べているシーンで、そこでは古くなった十戒の代わりに「人間描写も出来ない作者が名探偵なんか作るな」を始めとする新しいルールを作ろうぜ、みたいなことを登場人物が冗談で言っていて、思わず笑った*1。 実際には三つしか書かれてないのだけど、三つ目の「フェアとかアンフェアとか、がたがたいうな」というのは、昨今の『容疑者Xの献身』を巡る議論を思い起こした時に思わずにやりとしてしまった。
 でも、本格ミステリの書き手としては一度は言ってみたいことなのかもなぁ、とも思う。

*1:と、同時にどきりとした