腐敗カレー考

 私は割と忘れっぽい人間で、上述のようにしてカレーを駄目にしてしまった例は一人暮らしの2年間で既に五指に余るほど経験している。そういったカレーの腐敗に関しては人よりちょっと経験値が多いであろう私が考えるに、カレーの腐敗というのはまずタマネギから始まるようだ。にんじんやジャガイモはセーフな腐敗カレーであってもタマネギが駄目ということは往々にしてある。これはやはり、タマネギが他の野菜より腐りやすいということであろう。


 しかし、私は考える「タマネギが駄目ならタマネギだけ取り除いて食べれば良いではないか」と。これは全くの正論であり、マニーの欠乏に苦しむ学生としては是非とも取りたい手法ではあるのだが、しかし、そうは問屋が卸さない。想像して貰えば分かるように、タマネギという野菜は多量の水分を含んでいる。飴色タマネギを作ったことがある人ならば、一度は水分を抜くことによるタマネギの体積の減りように驚いたことだろう。とにかく、驚くぐらいに減る。
 だから、どうした、と思われるかもしれないが、この水分が大問題なのだ。結論から言おう。「腐敗タマネギは鍋の中にある限り(浸透圧の関係で)カレーに腐敗汁を垂れ流し続けるのだ」。腐敗したタマネギを一口でも食べたことがある人なら分かると思うが、あの酸っぱさはとても食せるものではない。嚥下するのすら困難だ。そんな味をした腐敗汁がカレーの中にどんどん混入していくのだ。タマネギをすべて取り除いたところで、腐敗汁は既にカレーに溶け込んでしまっていて、その味を大幅に劣化させている。ようは、もう食えないものになっているのだ。


 結論としては「箱の中の腐ったみかんより、カレーの中の腐ったタマネギの方が数段たちが悪い」ということだ。