『眠り姫』読了

眠り姫 (富士見ファンタジア文庫)

眠り姫 (富士見ファンタジア文庫)

 あまりライトノベルっぽくないライトノベル短編集。収録作は全部で7作だが、後半の探偵、真木シリーズ3作以外の4つはすべて独立した短編である。


 前回紹介した『〜田村くん』は主人公が中高生だったり、ラブコメだったり、ツンデレやら電波やらが出てきて、「いかにも」なライトノベルだったけど、こちらはそうでもなくて、特に『汝、信心深き者なれば』なんかは割とえぐい描写があったりなんかして、そういった意味では普通に単行本や、あるいはノベルスにして売ってあってもおかしくないような作品群だと思う。


 内容はバラエティに富んでいて面白かった。
 表題作の『眠り姫』は淡々と抑えた描写で描かれたラブストーリーで、大きな感動はないものの、じわりと余韻を残す良作。『汝、信心深き者なれば』は中世を舞台にしたホラーで、『水が暴れる』はいわゆるパニックホラー(?)。『さよならアーカイブ』は学園もので、『探偵、真木シリーズ』はちょっと甘めのハードボイルド*1、とものの見事にバラバラだけど、それらを一冊で読めるというのがライトノベルの良いところだと思う。


 収録作の中では真木シリーズがなかなかのお気に入りだが、『眠り姫』もなかなかの作品だと思う。逆に『さよならアーカイブ』は話のアイディア自体は秀逸だっただけに、もう少しひねりが欲しいかな、とも思った。

 挿絵はあまり好みではなかったけど、600円でこれを読めたのはお得だったと思う。コストパフォーマンスの良い作品ですので、ライトノベルを買うのに抵抗がなければ、是非。

*1:ソフトボイルド、みたいな感じかな