塩焼きそばを作るらしい。

 まだ気温の高い日があるとはいえ、朝夕の冷え込みは厳しくなってきました。いよいよ文化の秋の到来です。とはいえ、春秋用のジャケットをクリーニングに出した他は特に何をするでもなく、秋は静かに過ぎ去っていく……はずだったのだけど、そうは問屋が卸さず大学のサークルの方で今年も学園祭にシュッテンするらしい。カタカナにしたのには意味があって、去年は教室を借りて文芸誌を配布、あるいは展示するという文字通りの「出展」だったのが、今年は何を間違ったか、無謀にも焼きそば屋を「出店」するらしい。しかも、ただの焼きそば屋ではない。塩焼きそば屋だ。
 塩焼きそばといえば、塩焼きそばである。簡素な物は焼き肉に使う塩だれで、ちょっと凝ったものは中華スープの素と塩こしょうで味付けをするという、あの塩焼きそばである。おたふくソースをこよなく愛する関西人にとっては異端中の異端*1であり、おたふくソース系の出店が並ぶ*2学園祭においては獅子身中の虫となりかねないメニューである。その塩焼きそばで勝負をしようと、我らが文芸研究会の同士は言うのである。
 私は反対しようかと思った。しかし、彼らの目に宿る確かな決意の前に、言おうとした言葉は露と消え、開こうとした口も寸分たりとも動かなかった。僕が何を言おうと彼らの意志を変えることは出来ない。私はそう悟ったのである。しかし、私には一抹の危惧があった。浅いようで深い焼きそばの世界において本当に塩焼きそばが通用するのか。売れることなく手元に残った大量の麺を前に涙を流すようなことにはならずに済むのか。同じような思いを抱いたものがいたのだろう。彼は問うた。この中で誰か、塩焼きそばを作ったことがあるものがいるのか、と。

 ――挙手をしたものは一人もいなかった


 と、いうことで出だしから暗雲が漂いまくっておりますが11月12,13日に神戸大学は六甲台キャンパスで行われます六甲祭において塩焼きそば屋を出品する予定です。不肖、私山倉も食品担当としてキャベツを刻んだり麺を炒めたり、あるいは自主サボタージュして部屋に引きこもっているかもしれませんので、お暇な方は是非。

*1:か、どうかは知らないけれど、そういうことにしておこう

*2:か、どうかは知らないけれど、そういうことにしておこう