経営学、難しい

 私は法学部の人間ですが、必要要件単位の中に「経営学部の授業、4単位」というのがあるので、経営学の授業もとっています。今回の授業では、「競争入札」と「せり」について学んだのですが、これが難しい。
 先生が言うには「複数の買い手がいて、誰がどの値段で買うか分からない、と言う状況があるとき、売り手はなるだけ高く売るために「せり」や「競争入札」の手段を使う。
 しかし、この2種類の方法の内、仮にどちらか一方の方が売り手にとって有利だとしたら、売り手は専らそちらを使うようになり、もう一方は使われず、消えてなくなるのではないか」
 とのことで、
「今日は、それについて、高校数学の範囲で確かめてみたいと思う」

 という前置き(とゲーム理論やらナッシュ均衡やらの説明)の後に数学の時間が始まった。

(入札者は1〜nのN人)
「買い手「i」にとってのその商品の価値がViとしたとき、彼の入札金額をViの応じて変化する関数、Bi=β(Vi)とする。買い手「i」以外の入札者「j」も、商品の価値Vjに対して同様の関数Bj=β(Vj)を持つと予想する。
 このとき、iが得る利得Uiは

Ui=(Vi-Bi)Prob(Bi>β(V1)、……、Bi>β(V(i-1))、Bi>β(V(i+1))、……Bi>β(Vn))^N-1

 となる。これを区間〔0,1〕上の一様分布に独立に従うN-1個の確率変数の最大値の分布関数を用いて書くと……」

 この時点で教室の4〜5割が就寝、残りの2〜3割は理解を放棄してたっぽいですが、教授の勢いはそがれるどころかますばかり。微分したかと思えば、積分し、「この積分には裏技がある」とか、多分、これから死ぬまで一度も積分しない人間が大数を占めるであろう教室で嬉々とその裏技を解説した後、結論へ。
 すなわち、ナッシュ均衡の入札行動は

β(v)=N-1/N*v

 なのだそうだ。因みに、ナッシュ均衡とはゲーム理論における自らの利得を最大とする為の組み合わせ。とかで、まぁ、最善手くらいに理解しておけば良いでしょう。

 さて、このようにして、「買い手」の入札行動の最善手が分かったわけだから、次は落札の期待値を求めると、これが

E〔p〕=N-1/N+1 となるらしい。

 ここまでが授業の前半。後半ではセリについて分析されたわけですが、こちらもシグマは飛び交うは微分はするやら何やらで、もう混乱状態。

 最終的に出てくる落札の期待値は競争入札と同じE〔p〕=N-1/N+1

「このように、双方とも売り手にとってナッシュ均衡となるシステムなんですね」と満足げに教授は語るが、聞いている生徒はもはや殆どいないと言っていい。使ってる道具自体は高校数学かも知らんが、スピードは既に高校生の域を大幅に超えている。ましてや、受験後の大学生のスピードなんか……

 その後、夜間主コースの学生と行ったセリと競合入札の実験について、語ってあったけどこっちの方が面白かったな。
 やってることは面白いし、雑学として学ぶなら「おぉ」で済むけど、大学の授業としてやるのはちょっとキツすぎでした。

 この数学を素で解ける人は京大の数学も簡単に解けるんでないかな、とか思ったりも。

 何にしろ、経営学部の学生さんは凄いのです。こんなん、法学部じゃ分からないよ……。