七姫物語

七姫物語 (電撃文庫)

七姫物語 (電撃文庫)


あらすじ

 先王の「遺児」であるとされる「姫」を擁立する7つの主要都市。その一つ、「カセン」の姫として、「背高(せいたか)さん」こと武人テン・フォウと「嘘つきさん」こと軍師トエル・タウに担ぎ出された9歳の孤児、空澄(カラスミ)。
 テンとトエルに囲まれて、姫君としての作法を学びながら暮らす月日は、不穏な影こそ感じるものの、緩やかにすぎて行く。
 しかし、彼女が12歳の時、カセン中央の玉水府への入城の準備を始めると同時に、隣都市ツヅミがカセンへの侵攻を開始する……。第9回電撃ゲーム小説大賞、金賞受賞作。

感想

 「軍師」だとか「武人」だとか聞かされるだけで、ワクワクしてしまう三国志好きな私ですが、やっぱりというか、楽しむことが出来ました。戦自体の描写はそれほど多くないのですが、寡兵をもって衆兵を討つ辺りが素敵です。燃えますね。
 この作品の最たる特徴は、物語の語り口でしょう。視点人物は空澄で、この子は12歳の女の子なわけですが、この子が「見えすぎない」し「強すぎない」、そのことが物語をより面白くしてるのではないかと、思います。「他都市が攻めてくる」と言われても、この子には何の力もないわけで、どうしようもない。「見えすぎない」から、事件が起こるまで、それとは気づかない*1。「お姫様」だけど「普通の子」だから親近感がわいて、感情移入しやすいんですね。
 ただ、この子は「強すぎない」けど、「弱すぎ」もしない。「見えすぎない」けど、「全く見えない」わけではない。その辺りがまた、好感を抱かせてくれるわけですが。
 文章なんかはのんびりした感じで、僕の好みとは一致。こういう「のんびり」とした文章を書ければ良いんですがねぇ、僕も(苦笑)。

総括

 空澄という綺麗な名前の少女と、2人の嘘つき。そんな3人の関係がとても気持ちの良い、また、視点の独特さが良い感じに物語に絡み合っている、そんな作品でした。

*1:これはストーリーテリング的にはおいしいんだろうなぁ、とか