多分、顔面蒼白になったと思う

 祖母は「らくらくホン」というドコモのお年寄り向けを持っていて、これを使って携帯メールを送ってくださったりする。が、ここ数週間、連絡がないのでどうしたことかと思っていたらば、携帯が壊れていたらしい。
 充電をしても、電源が入らないとかで、こういうときは電池の接触が悪いというのが最もありがちなパターンで、実際、先日あった際に電池をきちんとはめ直して電源を入れると、確かに入る。
 ほらほら、と満足げに家族に自慢して僕、だが、すぐに携帯電話の電源は切れ、再びうんともすんとも言わない状態になってしまう。ここにいたって、僕も諦め、祖母はその壊れた携帯を片手に母と、新しくできた特養老人ホームを見学に車で出かけていった……

 それから、数時間後。夕食も終わり、僕と母と祖母はならんでテレビを見ていた。妹は友達と長電話、父親は別室でマッサージ椅子。と、母親は台所に炊事に立ち、居間には僕と祖母が残った。それから10分後、事件は起こる。

 テレビを見ていた僕がふと見ると、祖母が壊れた携帯電話を耳に当てているのだ。治すための悪あがきかな、と見ていると、頭をぺこりと下げ、あまつさえ「こんばんは」などと宣っている
 テ、テレビに話しかけているのか? と恐る恐る観察を続けていると、祖母は何やら笑いながら、壊れた携帯に向かって、「今日の地震は怖かったですねー」などと話しかけている。

 ……ついに来たか。

 祖母も今年で85。認知症になってもおかしくない。僕は、この事実を伝えるため、祖母の娘であるところの母のところに向かい、一つ深呼吸をして、「おばあちゃんが、携帯電話に話しかけているんだ」と伝える。
 母は息をのむ――かと思ったら、何もなかったように「ああ、携帯、新しいのと交換してもらったの」と

 早く言えい

 心臓止まるほどビックリしたぞよ……