法月綸太郎 『生首に聞いてみろ』

生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

あらすじ

首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する―著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は―!? 幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。(アマゾンの紹介より)

感想

 法月さん久しぶりの長編というだけでなく、内容も凄いということで去年だったかのミステリシーンの話題を一挙にさらった作品。と、いうことで読む前からかなり期待していた。そして、その期待は裏切られなかった。切り取られた首を巡り、錯綜する登場人物達の思惑、事態に光明をもたらしたかに見えた綸太郎の推理は崩され、現れたかに見えた真実もまたばらばらに崩されてしまう……。

 スリリング且つスピーディな展開でぐいぐいと読まされてしまった。ネタバレになりそうだから、詳しくは描かないけれど、事実がぐるんぐるんとひっくり返る様は非常に心地よかった。が、読み終わって一番胸に残るのは、綸太郎の無念さ。その辺りが新本格第一世代が描く「名探偵」のなかでは一番人間くさいなぁと感じる。
 間違いなく傑作ですので、未読のミステリファンは是非是非一読を。