東野圭吾 『トキオ』

 

時生 (講談社文庫)

時生 (講談社文庫)


 読んでから間が開いているので、あらすじはリンク先参照のこと。


 さすがは東野圭吾で、気がつけば涙腺は緩んでしまってるし、ラストの収束のさせ方もお見事。ただ、そこまでの書き方でちょっとどうかなと思われる部分も見られた。この物語の大まかなストーリーは「過去に飛んだ息子が、ろくでなしの父親を更生させる」といったものなのだが、その部分の書き方がどうにもイマイチというか、フラストレーションが溜まってしまうような感じだ。というのも、この父親、全く更生も成長もしないのである。
 いや、もちろん全編通じて全然成長しないわけではない。だが、どうにも成長するのが遅い。同じことを五回くらい言われないと守れないといった感じだろうか。そのため、視点人物であるのに感情移入がしにくい。また、親父さんの周りの人物が人間が出来すぎてるくらいに出来てるからか、やたらと駄目男に見えるのも悲しいところ。メインの事件に関しても親父さんの存在感がイマイチ薄いような感じで、もう少し別の書き方も出来たんじゃないかなとも思う。


 とはいえ、総じて見れば良作には違いない。ドラマ化されてもいたけど、出来れば原作を読んで頂きたいところだ。