部屋で起こっていた大変なこと

 僕は帰省する時の部屋の状態というのには割と気をつける方で、傷みそうな食材・食品の撤去はもちろんのこと、お布団を干したり、消臭スプレーをしたり、あるいは芳香剤を玄関先に持ってきたりして、帰ってきた時「気持ちいい」と思えるような状態になるようにして出て行くのが常です。


 が、今回はとんでもないミスをしていたわけで、どうなっていたか一言で言うと……


 冷蔵庫のコンセントが抜けてた


 あぁ、何という絶望的な事態。と、いうか、何故に抜けてる、コンセント。思い返してみれば部屋を出るそのとき、何かに躓いたような記憶が、薄ーい薄ーい記憶があるような無いような。しかし、もはや原因はどうでもよく、問題は結果である。
 いかに整理しておいたとはいえ、いくらかは調味料が入っている冷蔵庫がどうなっているか。私はおそるおそる冷蔵庫のドアを開けた。


……マーガリンくさい。
 それが最初に抱いた感想だった。冷蔵庫にはだし入り醤油やらゆずのポン酢(?)やらしょうが焼きのソース(?)やらが入っていたのだが、それらのほとんどは瓶やペットボトルで密閉されており、臭いは外部に漏れていなかった。唯一、密閉とまではいかなかったマーガリンの臭いだけが、庫内に漂っていたのである。


――まぁ、これくらいなら良いか。
 あまねく調味料をゴミ袋に詰め込んだ僕はほっと一息をついた。冷凍庫にはお茶の葉しかなかったはず。そう思って扉を開けた私の目に飛び込んできたのは「牛カルビマヨネーズ」といったいかにも健康に悪そうな名前の冷凍食品で、私の鼻に飛び込んできたのは保存温度を十度は超える状態で一ヶ月放置された食品が上げた抗議ともいえるような腐臭だった。


 しかし、僕はここで神か悪魔かあるいは一ヶ月前の自分かに感謝しなくてはならない。確かに腐臭こそしていたが、その冷凍食品のパッケージは全く開いていなかったのである。これが、もし開いていたらと思うと、想像するだに恐ろしい。おそらく、僕は数日に渡って冷蔵庫に近づくことが出来なくなっていただろう。


 その冷凍食品を捨て、更に防臭剤代わりに庫内においていたコーヒー殻にカビが生えてしまっているのを捨て、簡単に拭き掃除をしてからコンセントを入れた僕は夕飯を求めて、夜のコンビニへと向かったのであった。


 皆さんも長期に家を離れる際は冷蔵庫のコンセントにお気をつけください……という話なのでした。