友桐夏 白い花の舞い散る時間
最初に目にしたのは、まいじゃー推進委員会さんでお薦めされていたときだったろうか。コバルトは『マリみて』くらいしか読んだこと無いのだけれど、帯にも「今年最高のミステリー」とか書いてあるし、一応、コバルト・ロマン大賞の佳作に入賞しているらしいから、ある程度のレベルではあるだろうし、それに、ちょっと調べてみると、色々な書評サイトさんが表現に苦慮されていたりとなんだか面白そうだったので、購入してみることに。
とはいえ、目指す本はBL、やおい渦巻くコバルト文庫、さらに表紙はこんな感じ(↓)ということで、さすがに自分では買えず、妹に頼んで買ってもらったぜ。持つべきものは腐女子な妹か。
因みに何を言ってもネタバレになる、といった感じの作品ですので、ぼかして書いてはいるものの、感想を読めば何らかの先入観を持っちゃうのは確かでしょうから、読むかもなぁという人はスルーされることを推奨します。
- 作者: 友桐夏,水上カオリ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 文庫
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顔も名前も知らないチャット仲間のアイリス、シャドウ、ララ、ミスティー、そしてミズキ。彼女たちが知る情報は、同じ塾に通う高校生ということだけ。そんな彼女たちがアイリスの呼びかけで、実際に会うことになった。オフ会の場は、人里から離れた古い洋館『ムラサキカン』。匿名性を保つため、新たな名を振り分けていくが、その場に現れたのは…? 偶然か必然か、少女たちの運命は動き出す!
肝心の感想だけど正直に言えば、「途中までは良い出来」といった感じだ。用意された舞台はなかなか良い。「ネットで知り合った少女達」が「HNとは違う名前でオフ会をする」が、何故か一人だけ来ない、といういかにも何かありそうな設定。
僕はてっきり、「もう一人は何故来ないのか」。また、現れた少女達の「誰が誰なのか」といった方向に物語は進むと思ったのだけど、誰もそういったことを深く詮索しようとはせず、かわりに描かれたのは「変質者がいるのではないか」といったサスペンス風の展開や、それぞれの少女が背負った複雑な家庭環境についてで、それらにしてもさほど深く描き込まれることなく少女達の日々は過ぎていく。
あれ? ミステリだよな? 確かにソレっぽい空気はするけど、でも、解くべき謎もよく見えないぞと思っていたらば、終盤でやってきたのは急転直下の解決(?)劇。なるほど、これは感想が書きにくいわけだ。
個人的にはこういう落とし方は嫌いではない。似た作風の持ち主としてこの作家さんを挙げておられる方もいたけど、個人的には別の方が挙げていたこの作家さんに似ているといった方がピンと来る。確かに「コバルトから出たのが不思議」と言われるのも分かる気がする。どちらかというとメフィスト系だろう。
とはいえ、メフィスト系として見た場合は伏線の張り方や仕掛けの組み込み方がいささかお粗末なように感じられる。これが僕が「途中までは良かった」と感じる所以であって、真実(?)の説明の分かりにくさも相まって、どうにも上手くまとまってない印象を受けてしまう。説明されて、「ああ、そうか」とは思えるけど、「なるほどー」とまではいかない感じ。ようは、「納得感」がイマイチなんだと思う。そもそも、本格ミステリを志して書かれた作品では無いだろうから、そこまでのものを求めるのは酷なのかもしれないが。
また、最終章の書き方にしても先に挙げた(後者の方の)作家の作品の同じような場面と比較すると、あまりそういった空気が出ていないように感じてしまう。人物の描写が多少弱い部分があるので、その辺りが影響したのと思うけど。
光るものはあると思う。特に終章の「真実なんか知らない。事実ならここに構築してみせる(大意)」といった台詞は西尾好き・きのこ好きな僕はしびれちゃったし、描写そのものも(こういった落ちをつけるのであれば人物描写が不足していると思うけれど)普通の小説としては問題ないものだと思う。
個人的には「リリカルミステリ」という響きは大好きなので(笑)、そういった路線で書いていってもらえればと思うけど、出来ればもう少し日常的なレベルというか、あまり風呂敷を広げない感じに描いた方が持ち味は出ると思うので、そんな作品も描いてもらいたいと思うのであります。
えーと、「時間がないので長文になりました」といったところでしょうか(笑)。