金曜日のお仕事

 いつものように始まったこの日のお仕事は、しかし、途中からいつもとは大きく違う方向に変化してしまう。その予兆は全くなかったのだけど……。

 それが起こったのは混み具合のピークが過ぎた6時頃。一段落して、採点にも余裕が出てきて、それまでは、自分から質問に来る子供には教ていたのだけど、そうでない子には教えれなかったので、採点したばかりのプリントを手にそのプリントの子のところへ行き、軽く教えていました。
 すると、僕の袖を引く小さな手。いや、小さな手は可愛いのだけど、その強さが半端でなく、引きづられる僕。そのまま、何の抵抗も出来ないまま、右のてのひらを床に押しつけられ、それをふまれる。犯人は……小1の女の子なのでした。
 どうも教えて欲しかったらしいのだが、必要以上にくっつかれる。それをみた小2の女の子が「恋人同士みたいだね」などと言うものだから、その子は「恋人じゃないもーん」などと言いながら、僕の手の甲に赤の水性ペンで「バカ」と書いてくださる。その間も僕が逃げ出さないよう、今度は足を全体重乗せて踏んでいる、というか乗っている。
 とりあえず、教えはするのだけど、話を聞いてるかどうかすら怪しい。頑張って、頑張って、頑張って教えたけれども、はて、理解してもらえたものか。
 その後、さっきと同じ手の甲に今度はシャープペンシル「バカ」と書こうと(と、いうより刻もうと)していたようですが、何とか思いとどまってくれたようです。いや、良かった、良かった。

 ところで、前出のお話に出てきたに「これってモテモテなのかな?」と利いたら、「貴様は池沼か」みたいな顔で睨まれました。大人のジョークはまだ分からなかったようです。

 しかし、小さい女の子が男の人にさらわれる事件は良くあるけど、男の人が小さな女の子にさらわれるのは初めて見た、というか体験しましたぜ。